混沌の中に美しさを感じる場所
ヒンドゥー教の聖地として崇められるガンジス川。
生活排水や遺灰が流れる中で、洗濯をしたり、沐浴をしたり、川遊びをする人がいたりと、まさに混沌な世界がそこには広がっています。
今回はそんなガンジス川で、自分史上もっとも神秘的な日の出を見たときの様子を紹介します。
ガンジス川とは
ヒンドゥー教徒にとってもっとも神聖な川。
とくにガンジス川が流れる都市のうち、日本人にもよく知られているバラナシ(Varanasi)はインド中のヒンドゥー教徒が憧れる聖地であり、
- 沐浴することであらゆる罪が清められる
- 遺灰を流すことで輪廻から解脱でき、すぐに天国にいける
などと信じられています。
なおガンジス川は、ヒマラヤ山脈の南麓ガンゴートリー氷河から流れるバギーラティー川が源流となっており、バラナシ以外にも、この川沿いには多くの聖地が存在しています。
ガンジス川への行き方
日本から直接行く場合は、デリーかバンコクで一度乗り換えてバラナシ近郊の空港「ラール・バハードゥル・シャーストリー空港」に降り立ち、そこからタクシーで市内に向かう、というのがもっともスムーズな行き方です。
一方、節約系バックパッカーは、コルカタかデリーに降り立ち、そこから列車で途中都市を経由しながらバラナシに向かうというのが一般的かと思います。
ガンジス川はバラナシより上流にも存在する
実は、ガンジス川はバラナシよりも上流に位置する、リシケシやハリドワールといった都市にも流れていて、バラナシと同じく聖地として扱われています。
ガンジス川の上流はバラナシと違ってそれほど汚れていないので、沐浴してみたいけど病気が怖い…という方は、リシケシやハリドワールを訪れることをおすすめします。
ガンジス川から見る日の出が最高すぎた
今回僕は、バラナシにある汚い方のガンジス川で日の出を見てきたのでその時の様子をお届けします。
朝4時30分、ガンジス川観光のメインガート「ダシャーシュワメード・ガート」からボートに乗り込み、
伝説のゲストハウス「久美子の家」を横目に川をのぼっていきます。
“ガンジス”は、ヒンドゥー教で川の女神を意味する”ガンガー”が由来とされており、
“バラナシ”は、周辺にあるヴァルナー川とアッシー川に挟まれた街という意味で、”ヴァルナー・アッシー”を由来とする、まさにここは”川の聖地”です。
ケダー・ガートにはたくさんの人が集まっていました。
ガートとは、ガンジス川沿いに多く存在する炊事や洗濯、沐浴などを行う水場であり、住民の生活には欠かせない場所です。
まだ早朝5時ごろにも関わらず、多くの地元民がガートで各々の時間を過ごしています。
インド人の朝はとてつもなく早いですね。
遺灰や遺体が流されているかと思えば、ゴミや排泄物もそのまま垂れ流し。
そんな中で洗濯をする人がいれば、食器を洗う人もいて、
シャンプーをする人がいれば、ただ水浴びをする人もいる。
ガンジス川を訪れるインド人には「衛生」だとか「水質」だとかいう概念は存在しません。
なぜなら川が神聖だから。
ガートは初めから水場として作られたわけではなく、元々は王様の離宮でした。
歴代バラナシに君臨した王様にとって、この神聖なガンジス川のほとりにお城を立てることはひとつの名誉であったため、時代とともにどんどん立派な建物が作られていきました。
それが現在のガート(沐浴場)につながるわけです。
そんな説明を受けながら川を浮遊していると、だんだん空が明るくなってきました。
下の方は曇っていますが、あと少しで太陽が顔を出しそうです。
川沿いのガートも柔らかいあかりに照らされてより幻想的に見えます。
完全に太陽が昇りました。
ちなみに建物が一切ない対岸にはなにがあるのかとガイドさんに聞いてみると、
「何もない」のだそう。
ガンジス川の対岸は不浄の地という言い伝えがあり、誰も住みつかなかったらしいです。
一説によると興味本位で訪れる観光客相手に商売している人がちらほらいたりはするようですが…。
岸からかなり離れた場所で泳いでいる人もいますね。
僕ら日本人からすれば混沌としている非日常が、彼らにとっての日常。
理屈で考えれば汚いはずなのに、なぜか美しい。
心がグッとつかまれる。
日の出時間のガンジス川にはそんな不思議な空間がありました。
そんなこんなで、ダシャーシュワメード・ガートの船着場に帰還。
このあと軽く火葬場を見学し、宿へ戻りました。
ガンジス川で行われる火葬と水葬
ガンジス川で火葬をしてもらうには900キロもの薪を必要とし、費用はだいたい一人当たり7000ルピーほどかかるようです。
ガンジス川沿いで死を待つための部屋を借りたりするとさらにお金がかかり、生涯かけて貯めたお金を持ってこのバラナシを目指すヒンドゥー教徒も多いとのこと。
ガンジス川では基本的に遺体を沐浴させてから火葬を行い、その遺灰を川に流しますが、ヒンドゥー教の神であるシヴァの怒りを買わないために、
- ヒンドゥー教の修行僧「サドゥ」
- 10歳以下の子供
- 妊娠中の女性
- ヘビの毒などによって亡くなった人
- 事故で亡くなった人
- 動物
などは燃やさないでそのまま流す、いわば水葬も行われています。
僕は滞在中に、亡くなった犬がそのまま流されているところを見ました。
ちなみに火葬を行う場合でも、男性の心臓と女性の左の尻だけは燃やさずにそのまま流すらしいです。
ガンジス川周辺の治安について
バラナシのガンジス川周辺では、過去に日本人が殺害される事件が起きていたり、スリや強盗、詐欺などのトラブルが多かったりと、治安は比較的よくないといわれています。
他の都市で会ったインド人に聞いても、「バラナシは汚いし危ないからあんまり行きたくない」と言うのを何度か聞きました。
実際に街を歩いてみても、やはり他のインドの都市よりも少し危険な印象を受けましたね。
ガンジス川周辺の道は狭く入り組んでいる場所が多いので、特に外が暗いうちは一人で出歩いたりしない方がいいでしょう。
日の出ツアーは各ゲストハウスや街中のツアー会社からたくさん敢行されているので、必ず事前に予約して行くことをおすすめします。
治安以外にも、「火葬場で死体を燃やしているところを撮るのは禁止」などその土地独自のルールがあったりするので、観光の際には十分に注意が必要です。
バラナシの日の出は一生の思い出
ガンジス川は想像以上に混沌としていますが、想像以上に幻想的な場所でもありました。
特に日の出が作り出す独特な空間は言葉にできないほど素晴らしいです。
ぜひ一生のうちに一度はバラナシに訪れ、ヒンドゥー教徒の不思議な死生観に触れてみてください。
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