イギリスの悲惨な歴史を語り継ぐロンドン塔
耳をおおいたくなるような恐ろしい逸話であふれるロンドン塔。
血なまぐさいイギリスの歴史を体感できる城塞として、ロンドン観光では欠かせない人気スポットのひとつになっています。
今回は、そんなロンドン塔を実際に観光して感じた見どころを、たっぷりとご紹介します。
ロンドン塔とは?
ロンドン塔の歴史は古く、築城は11世紀後半にまでさかのぼります。
もともとはイングランドを征服したウィリアム1世が外敵から身を守るために、現在のロンドン塔の中心にそびえ立つホワイト・タワーを建設したのがはじまりですが、時代を経るにつれて、動物園や監獄や造幣所や天文台など、様々な用途で使われてきた不思議なお城です。
現在は観光スポットとしてはもちろん、礼拝所や武器の保管庫として使用されており、世界遺産にも登録されています。
営業時間 | サマータイム(3〜10月) | 火〜土 – 9:00 〜 17:30 日〜月 – 10:00 〜 17:30 (最終入場17:00) |
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ウィンタータイム(11〜2月) | 火〜土 – 9:00 〜 16:30 日〜月 – 10:00 〜 16:30 (最終入場16:00) |
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定休日 | 12/24〜26、1/1 | |
入場料金(2020/02/29まで) | 一般:27.5ポンド 子供(17歳以下):13.1ポンド |
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オーディオガイド | 日本語あり(4ポンド〜) | |
周辺の観光スポット | タワー・ブリッジ、ロンドン大火記念塔など | |
公式サイト | Tower of London | Historic Royal Palaces |
ロンドン塔は幽霊屋敷としても有名
ロンドン塔では、拷問や処刑、暗殺などが繰り返されてきた場所でもあるせいか、幽霊の目撃証言が絶えません。
- 斬首刑を受けた首なしのアン・ブーリンの霊
- 投獄され不可解な死を遂げた二人の幼王子の霊
- 在位わずか9日間で廃位にされて処刑されたジェーン・グレイの霊
などなど。
ただ実際に行ってみると、個人的にはそれほど不気味に感じるスポットはありませんでした。
まあ明るい時間ですし、普通に観光地で人もいっぱいいますしね。
オカルトチックな雰囲気が好きな方は、夜に入場できるツアーも行われているので、そちらをチェックしてみてください。
チケットはロンドン塔の公式サイトから購入できます。
開催日 | 2019年11月〜2020年4月のうち、特定の日曜日 |
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開催時間 | 19:00〜 |
料金 | 27.5ポンド |
対象年齢 | 12歳以上 |
夏目漱石とロンドン塔
ちなみにロンドン塔は、夏目漱石の著書『倫敦塔』の舞台にもなっていることで有名です。
作中で述べられている「倫敦塔の歴史は英国の歴史を煎じ詰めたものである。」とはまさに言い得て妙。
この『倫敦塔』は著作権が切れており、青空文庫等で無料で読めるので、興味のある方はぜひ読んでみてください。
短いのでサクッと読めると思います。
ロンドン塔への行き方
ロンドン塔へは地下鉄で簡単にアクセスできます。
最寄り駅はタワー・ヒル駅(ディストリクト線、サークル線)で、ロンドン塔までは徒歩5分ほど。
タワー・ヒル駅以外にも、
- オルドゲート駅
- オルドゲート・イースト駅
- タワー・ゲートウェイ駅
- モニュメント駅
- バンク駅
- ロンドン・ブリッジ駅
- フェンチャーチ・ストリート駅
等からでも徒歩10〜15でアクセスできるので、観光プランや滞在しているホテルなどに合わせて利用駅を考えましょう。
ちなみにバスでも、15、42、78、100、RV1のいずれかに乗れば、ロンドン塔のすぐ近くまでたどり着けます。
ロンドン塔のチケットの買い方
ロンドン塔の入場チケットの購入方法は主に以下の3つの方法があります。
- 事前にロンドン塔の公式サイトで買う
- 事前に日本語のチケット予約サイトで買う
- 当日ロンドン塔のチケット売り場で買う
この中で一番のおすすめは、他よりも料金が10%お得になるロンドン塔の公式サイトでの購入ですが、「英語のサイトで予約なんて無理…」という人には日本語のチケット予約サイトでの購入をおすすめします。
日本語の予約サイトってめっちゃ仲介料取られそうなイメージですが、大手の現地ツアー予約サイト「ベルトラ」をのぞいてみたら、当日現地で購入するのと全く同じ料金でした。
ちなみに当日チケット売り場で購入するのだけは絶対におすすめできません。
売り場が常に混雑しているのもありますが、実はチケット売り場の料金表には寄付金込みの値段がデフォルトで表示されています。
つまり、何も言わずに購入すると「通常のチケット料金+寄付金」がかかり、値段は日本語の予約サイトで購入するよりも高くなります。
「寄付金なしで」と言えば通常料金で売ってくれますが、まあ気まずいですよね。笑
とにかく当日購入するメリットはひとつもないので、ロンドン塔のチケットは必ず事前に購入しておきましょう。
また、ロンドン塔周辺にはこういった個人商店でチケットを売ったりしている場所もありますが、正式なチケット売り場はロンドン塔の目の前にしかないので、お間違えのないように。
値段は確認してないですが、こういうところでは何%か吊り上げられているはずです。
ロンドン塔見学の見どころ
いよいよロンドン塔の内部に潜入です。
ロンドン塔はとにかく広い上に、見学ポイントひとつひとつにたくさん逸話があってキリがないので、ここでは絶対に見逃せない見所に焦点を絞ってご紹介します。
ロンドン塔の衛兵ヨーマン・ウォーダーズによるガイドツアー
まずは、この団体の中心にいる赤と黒の制服を着ている男性、ロンドン塔の名物ヨーマン・ウォーダーズ(通称:ビーフィーター)です。
ヨーマン・ウォーダーズとはロンドン塔の衛兵のことをいい、住み込みで警備を行いながら、塔内を見学にくる観光客に対して無料のガイドツアーを提供しています。
ヨーマン・ウォーダーズは1485年に設立され、18世紀ごろまでは国王直属の軍隊でしたが、現在は退役軍人の方から組織されるいわゆる名誉職になっています。
この衛兵さんのガイドツアーは、それぞれ独自で考えられた話がユーモラスに展開されるため、何度来ても楽しめるのが特徴なんだとか。
ロンドン塔に入場してすぐのところにわかりやすくガイドツアーの集合場所があるので、気になる方はぜひ参加してみてください。
ちなみに所要時間は約1時間で、30分おきにツアーが開催されています。
1日のツアー初回と最終回の開始時間は以下の通り。
初回時間 | 火〜土曜日 | 10:00〜 |
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日〜月曜日 | 10:30〜 | |
最終時間 | サマータイム(3〜10月) | 15:30〜 |
ウィンタータイム(11〜2月) | 14:30〜 |
二度と生きて帰れない「トレイターズ・ゲート(反逆者の門)」
ロンドン塔に入ってすぐ目に入ってくるのがこちらのトレイターズ・ゲート。
これはロンドン塔が牢獄として使われていた時代に、反逆者と見なされた者が通された門で、「この門をくぐると生きて帰ってこれない」と言われていたようです。
有名な人物で言うと、ヘンリー8世の2番目の妻アン・ブーリン、そしてその娘のエリザベス1世などもこの門を通っています。(エリザベス1世は処刑されずに解放されています。)
ちなみにこの水の中には、観光地あるあるでコインが投げられているのですが、これらは全額ポピー・アピールというキャンペーンにあてられるらしいです。
ロンドン塔とカラスの伝説
日本の街中でよく見かけるカラスの1.5〜2倍はありそうな、大きな大きなワタリガラス。
これもロンドン塔の名物のひとつですね。
このワタリガラスは、「6羽のカラスがいなくなるとロンドン塔が崩れて、国も崩壊する」という予言により、17世紀頃から飼育されるようになりました。(現在は予備もいれて7羽が飼われています。)
勝手にどこかへ行ってしまわないように、空を飛ぶための羽が折られていたり、レイヴン・マスターと呼ばれるカラスの使い手が面倒をみていたりなど、徹底的に管理されているようです。
人に慣れているのか、こんだけ近づいて撮影しても全然大丈夫。
と思いきや、公式サイトいわく
— they can bite if they feel their territory is being threatened.
(縄張りが侵されたと感じたら噛んだりしてきます。)
出典:The ravens
とのことなのでご注意を。
ちなみにこういったロンドン塔とカラスにまつわるお話も1日に2回、ヨーマン・ウォーダーの方から聞けるようなので、興味のある方はぜひ。
ワタリガラスの飼育小屋付近で、毎日11:00〜と13:30〜それぞれ15分ずつ開催されています。
ウォーター・ルー兵舎前の衛兵
王冠や宝石などが保管されているウォーター・ルー兵舎の前に立つ衛兵。
ウォーター・ルー兵舎とは元々、ロンドン塔の管理者でもあったウェリントン公爵が1000人の兵士を収容するために建てたもので、彼がナポレオンを打ち破ったことで知られる「ワーテル・ロー(ウォーター・ルー)の戦い」にちなんで命名されています。
この衛兵は、そんなウォーター・ルー兵舎を守るために英軍から派遣されている伝統的な兵士です。
制服も銃ももちろん本物。
ちなみにこの兵士さんにちょっかいを出してめっちゃ怒鳴られている人の映像をYouTubeなどでよく見かけるので、当たり前ですが決して面白半分で近づかないように。
彼らは大切な任務中なので。
間違ってもテーマパーク等にいるコスプレしたキャラクターなどと同じだと思ってはいけません。
イギリス王室の宝庫「ジュエル・ハウス」
ウォーター・ルー兵舎の中にあるのが、「クラウン・ジュエル」というイギリス王室の儀式で使用される宝石類が多数展示されているジュエル・ハウス。
ジュエル・ハウスの中は完全に撮影禁止です。
見どころとしては、
- 国王の戴冠式で使われる「聖エドワード王冠」
- 世界第2位のダイヤモンド「偉大なアフリカの星」
- 現存する世界最古のダイヤモンド「コ・イ・ヌール」
などがあります。
Photo on Wikipedia
僕はもともと宝石とか全く興味なくて「ただ光ってる石の何がそんなにいいんだか」と思っていましたが、このクラウン・ジュエルには度肝を抜かれました。
薄暗い部屋の中に、数えきれないほどの宝石が煌々と輝く神秘的な空間。
その空間を動く歩道に乗りながら静かに見学していきます。
気に入った展示物に出くわしても一瞬しか見ていられないという刹那性が逆によくて、ずっと鳥肌立ちっぱなしでした。
個人的にはロンドン塔の中で一番のおすすめスポットです。
ジュエル・ハウスは大人気でいつも行列ができているとよく言われていますが、僕が行った時は閉館に近づいてる時間だったからか、全く並ばずに入れました。
時間帯によって混雑具合がだいぶ変わってくると思うので、様子を見つつ訪れてみるといいと思います。
ロンドン塔の処刑場「タワー・グリーン」と「クイーンズ・ハウス」
ロンドン塔に収監されていたほとんどの囚人は、主に塔外で公開処刑を受けていましたが、特に身分の高かった囚人はロンドン塔内で処刑されていました。
タワー・グリーンとは、その身分が高い人の処刑が行われていた広場のこと。
処刑方法は斬首刑が採用されており、一般的な死刑囚と比べると比較的苦痛が少ないように配慮されていました。
ちなみにこのタワー・グリーンで処刑された人は史上たったの7人らしいです。
タワー・グリーンのすぐ目の前にあるのは、アン・ブーリンがロンドン塔収監時に過ごしていたクイーンズ・ハウス。
このクイーンズ・ハウスは、元々はヘンリー8世がアン・ブーリンと結婚する前に彼女のために建てた家でしたが、けっきょく利己的なヘンリー8世自身によって彼女を幽閉するために使われるという、なんとも皮肉なお話です。
何も知らなければ、ただの穏やかでおしゃれな住宅街に見えるのがまた切ないですね。
囚人の言葉が刻まれた「ビーチャム・タワー」
囚人が掘ったメッセージが壁に残されているビーチャム・タワー。
ビーチャム・タワーは1281年、エドワード1世の時代に防壁として建てられたものでしたが、実際は監獄として使用されていました。
今のイギリスで考えれば、投獄されるほどのことなんてしていない人がほとんど。
まあ歴史ってそういうものですが、罪なき人が死を目前にして、こうして生きた証を刻もうとしていたことを考えると心が引き裂かれる思いになります。
こちらはカトリックから改宗しなかったことで、エリザベス1世によって投獄されたフィリップ・ハワードが残したメッセージ。
“The more affliction we endure for Christ in this world, the more glory we shall get with Christ in the world to come.”
「この世でキリストのために苦しみ耐えれば耐えるほど、私たちはあの世でキリストの恵みを受けることになるだろう」
謎の失踪事件の舞台「ブラッディ・タワー」
比較的身分の高かった人が収容されていたブラッディ・タワー。
ブラッディ・タワーは、幽閉されていた二人の幼い王子が突然姿を消したという謎めいた事件で有名です。
二人の王子とは、わずか12歳で王位を継承したエドワード5世とその弟ヨーク公リチャードのこと。
この兄弟は、叔父であるリチャード3世の政略によってロンドン塔に幽閉されていましたが、ある日姿を消し、約200年後にホワイト・タワーで白骨化した状態で発見されました。
通説ではリチャード3世によって殺害されたとされていますが、確定的な証拠はありません。
ブラッディ・タワーではそんな二人の王子の物語をうかがい知れるほか、外敵からの侵入を防ぐために使われていた落とし格子の上からの様子なども見ることができます。
寒気がする拷問部屋「ロワー・ウェイクフィールド・タワー」
イギリスでは拷問が法で認められたことはなく、ロンドン塔での拷問も統計上はごく稀にしか行われていなかったそうです。
このロワー・ウェイクフィールド・タワーでは記録に残っているものだけで言うと、100年の間で81の囚人に対して拷問が行われたらしい。
1年に1人もいないので、これが本当だったら確かにめっちゃ少ないですね。
中にはロンドン塔で一番有名な拷問器具「引き伸ばし拷問台」が展示されていました。
使い方はご想像にお任せします。。
ロンドン塔のはじまり「ホワイト・タワー」
ロンドン塔の中心にそびえ立つホワイト・タワー。
ホワイト・タワーは、現在のイギリス王室の始まりとされる征服王ウィリアム1世によって1078年に建てられたもので、外敵から身を守るのはもちろんのこと、ロンドンの統治を潤滑に進めるために、市民に畏怖の念を抱かせる役割を担っていたらしい。
ロンドン塔ははじめこのホワイト・タワーのみでしたが、その後リチャード1世やヘンリー3世が壕や外壁を作り、徐々に現在の規模になっていったようです。
ホワイト・タワーの入り口には、前述したブラッディ・タワーで行方不明になった二人の王子の遺骨が発見されたとされる階段がありました。
ここには日本語の解説もあるので、お見逃しのないように。
そして塔内では、主に中世の王室の甲冑や武器などが展示されています。
中でも「ライン・オブ・キングズ」という歴代の王が使用していた甲冑と武器の展示は圧巻です。
こちらは、イギリスと日本の正式な国交が始まった1613年に、当時の将軍、徳川秀忠よりジェームズ1世あてに贈られた本物の甲冑。
1661年からホワイト・タワーに展示されていたらしいですが、当初は日本からの贈り物だということは忘れ去られていて、なぜかムガル帝国からの贈り物として紹介されていたみたいです。
また、ホワイト・タワーの中には11世紀に作られたロマネスク様式のチャペル(聖ジョン教会)もありますが、僕が行ったときはドラマか何かの撮影中で見学できませんでした…。
ここはまたの機会にこようと思います。
ロンドン塔の歴史散策楽しすぎ
要点を絞ったつもりが、かなりボリューミーな内容になってしまいました…。
これでもまだほんの一部しか紹介できてないので、あとは実際に行ってご自身の足でロンドン塔を探検してみてください。
イギリスの歴史の中を歩いている気分になれるロンドン塔観光は最高ですよ。
ちなみにロンドン塔には日本語のガイドブックやオーディオガイドもあるので、英語が苦手な方でも全く問題なく楽しめると思います。
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